【馬車道歴史散策】文明開化の味をそのままに! 老舗グルメを楽しむ

明治初期に整備され、西欧文化を先んじて取り入れながら150周年を迎えた馬車道商店街には、その歴史に裏付けられたグルメも充実しています。特に、文明開化の象徴とも言える「洋食」や「スイーツ」は要注目です。
今回は、馬車道商店街を代表する6つの名店をご紹介します。
棟方志功も愛した老舗のとんかつ「勝烈庵」
まず紹介するのは、『勝烈庵』。1927(昭和2)年創業の老舗のとんかつ屋さんです。
外国人の料理人が外国人居留地で作っていたカツレツを元に、初代の店主が日本風にアレンジしたことに端を発します。

お店の名物は四角い形をしたヒレかつで、さまざまなこだわりがつめこまれた逸品です。
例えば、衣に使われているパン粉。後ほどこの記事にも登場する馬車道十番館で作られている独自配合のパンの耳、それもその内側だけを使って作られたパン粉です。

とんかつにかけるソースも創業以来90年以上変わらぬ味で、野菜や果物を2日間かけてじっくりと煮込んだものです。煮込んだ後に、さらに1日寝かせてようやく完成となる、手間暇のかかった特別仕様のソースです。
歴史あるお店らしく、店名の文字は棟方志功によるもの。
実際に棟方志功が来店したこともあるそうで、店内にも志功の作品が飾られています。長い歴史を持ったこだわりの味はもちろん、文化的な一面も持った馬車道らしいとんかつ屋さんというわけです。
馬車道らしさを感じさせるレンガ造りのレストラン「馬車道十番館」
歴史を感じさせるレンガ造りのたたずまいが印象的な『馬車道十番館』も、馬車道グルメでは欠かせないお店です。
十番館という屋号は、かつて一番館、二番館……と呼ばれた、海岸沿いに建てられた外国の商館に由来するものです。

店名だけでなく、建物自体も当時の建築様式を参考に再現されたもので、1970(昭和45)年の開業ながら、それを上回るような歴史を感じさせる堂々とした姿です。
1階は喫茶、2階にバーを置き、3階がレストランになっています。
30席という程良いサイズのレストランでは、食材の良さを生かすというフランス料理の基本理念に沿った料理が提供されます。ディナーコースでは、8500円の「料理長推薦」から4500円の「美食キュイジーヌディナー」まで、本格的なものからリーズナブルなものまで複数のコースが用意されています。

ランチもいくつかのメニューが用意されていますし、結婚披露宴などのパーティにも対応してくれますので、それぞれの場面に応じた料理やもてなしを楽しめる、そんなレストランです。
120年伝わる“文明開化の味”、牛鍋処「荒井屋」
曙町に本店を構える牛鍋の老舗『荒井屋』。
日本で肉食文化がポピュラーになり始めた時期からのれんを掲げ、その歴史は120年を越える老舗中の老舗です。
昔からの伝統を引き継ぎつつも、新しいチャレンジにも積極的に取り組み、2007(平成19)年には馬車道駅のそばに『荒井屋 万國橋店』をオープンさせました。

120年の歴史を数える看板メニュー・牛鍋の味の決め手は、砂糖や醤油、みりん、酒などを混ぜた秘伝の割下。
また、厳選した黒毛和牛を1頭買いするという牛肉はもちろん、シイタケや焼き豆腐、白滝、野菜など、脇役の食材にも気を配り、「文明開化の味」を提供し続けています。

牛鍋以外にもしゃぶしゃぶがあり、それぞれコースも用意されています。単品であれば一人前からでも注文できるので、お一人様でも問題なし、なのです。
肩バラ肉を使った「牛串焼」やほほ肉を使った「牛煮込み」、もも肉の「牛焼霜造り」などの一品メニューも充実していますので、さまざまな楽しみ方ができるでしょう。
伝統の中に光る工夫が、戦争や震災も乗り越えた老舗の人気の秘密です。
異国情緒と神戸牛・本黒毛和牛ステーキを「横浜瀬里奈 浪漫茶屋」
横浜でステーキといえば、ここ横浜瀬里奈 浪漫茶屋があります。
関内ホールのすぐそばで35年営まれてきたこのお店は、異国情緒が漂う古き良きたたずまい。その名の通り、大正ロマンを感じさせる空間でもあり、店内は優雅で気品のある雰囲気に包まれています。

特選A5ランクの神戸牛や特選本黒毛和牛といった高級牛肉を使い、コース料理も用意されています。熱した自然石の上で焼き上げる石焼ステーキは人気の定番メニューです。

また、ステーキ以外にも、しゃぶしゃぶや牛鍋といった牛肉料理が取り揃えられていて、お祝い事や法要などの会食にも利用することができます。
そのほか、食に関する戒律が厳しいイスラム教徒でも安心して楽しむことのできるハラール神戸牛コースが用意されるなど、国際都市・横浜ならではの心遣いも見て取ることができるお店となっています。
プロが入れる美味しい紅茶で一休み「喫茶サモアール 」
さて、馬車道グルメは、お腹いっぱいに食べられるお食事メニューだけではありません。散策の合間のちょっとした休憩に利用できるお店だってあるんです。
県立歴史博物館のはす向かいにある喫茶店『サモアール』は紅茶の専門店で、特にアイスティーの美味しさで知られるお店です。

1974年オープンの横浜駅西口にあるジョイナス本店に続き、1983年に開業した馬車道店。重厚でレトロな昔ながらの喫茶店といったたたずまいで、こちらが本店だと勘違いするお客さんもいるほどだそうです。
人気のアイスティーは19.5オンス(約540ミリリットル)の大きなグラスで出されています。見た目のインパクトはなかなかのものですが、実際に煮出すのは90ミリリットル程度。たっぷりのアールグレイを使い、しっかり濃く出して、そこから氷で薄めていくという方法で作られています。

海外でも経験を積んだ店長の出すアイスティーは、すっきりとした飲み口とさわやかな香りを楽しむことができ、飲んだ後に渋みがまったく残らないプロの味。
ホットに比べ、より深い知識や高い技術が求められるというアイスティー。専門店で紅茶を飲んだことのない人には、ぜひ足を運んでもいらいたいお店です。
お約束のお土産スイーツ“馬蹄パイ”が人気「ガトー・ド・ボワイヤージュ」
最後にご紹介するのは、スイーツのお店『ガトー・ド・ボワイヤージュ』です。
馬車道に本店を構え、横浜市内はもとより、全国のデパートなどにも出店している人気の洋菓子店です。

店名のGateaux de voyage は、フランス語で「旅行のお菓子」を意味し、旅のお供になる日持ちのする焼き菓子のことを指すそうです。
その看板の通り、焼き菓子は充実のラインナップで、馬車道にちなんだお菓子も用意されています。
ヨーロッパでは、その形から“幸せを受け止めて、満たしてくれる”縁起の良いものとされている馬蹄の形をしたパイは、その名も「馬車道馬蹄パイ」。食べる人の幸せを祈ったこのパイは人気商品の一つです。

もちろん焼き菓子だけでなく、洋菓子店の目玉であるケーキも細部にまでこだわり、華やかなホールケーキから、可愛らしい一人用のケーキまで取り揃えられています。
季節限定の商品もありますから、食べておいしいのはもちろん、お店を訪れるたびに夢に溢れた新しいお菓子に出会えるかもしれません。
さまざまな馬車道グルメを楽しもう!
150年の歴史を誇る馬車道には、気軽に立ち寄れる大衆向けのお店から、大切な場面で使いたい高級店までさまざまな飲食店が軒を連ねています。
チェーン店も出店していますが、馬車道ならではの歴史に裏打ちされた名店や、評判の人気店に足を運んでみると、より馬車道を楽しめるはず。馬車道散策の際は、馬車道グルメもお忘れなく!