色とりどりの幾何学模様で魅せる、箱根「寄木細工」

日本を代表する観光地のひとつ、神奈川・箱根。その箱根の伝統工芸といえば、真っ先に名前が挙がるのが「寄木細工」でしょう。天然の木材の様々な色彩と木目を生かしつつ貼り合わせ、精緻な幾何学模様を織りなす木工芸です。そして、この寄木細工の元祖とされるのが「浜松屋」。江戸時代に創業して以来、200年以上が経った今も箱根の地にその技を伝えています。
写真上「三ツ引総張り(小寄木)」(63,000円・税込・以下同/幅355mm×奥行き264mm×高さ300mm)。
寄木細工の典型とも言える細かな文様を前面いっぱいにあしらった、「貼り」製法(後述)による引き出しです。
(写真提供:浜松屋、以下同)
寄木細工の種類について
寄木細工には、大きく分けて2種類あります。ひとつは、断面に模様が出るよう組んだ種木を特殊なカンナで0.15~0.2mm程度に薄く削り、それを小箱など木製品の外側に貼るもの。「貼り」「ズク貼り」と呼ばれ、箱根寄木細工の原点といえる製法です。そして、もうひとつが「無垢づくり」と呼ばれる製法で、厚みのある種寄木を加工してそのまま製品を形づくるもの。昭和20年以降、接着剤や塗料などの改良によって実現した作り方で、板状に切ったものをハガキ入れ、文庫などに仕立てるほか、ろくろで削り出すことで円形を帯びた盆や茶筒も作られています。

「無垢中盆(A)」(13,500円/直径260mm×厚み26mm)。
模様のスライスを貼りつける「貼り」と異なり、種寄木そのものを削って成形する、より贅沢な製法と言えます。
貼り・無垢、いずれも様々な種類の木材を用いることから、そのデザインに高度な美的感覚が求められるのはもちろんのこと、それぞれの材質や硬さを考慮しての加工が必要で、長い経験と熟練の技があって初めて成せる技とされます。本店併設の「見える工場」では、随時実演見学を開催していますから、箱根観光の折には立ち寄って、職人の技を目の当たりにしてみてはいかがでしょう。