武人・茶人の心を伝える、最も細い織物「真田紐」

「真田紐」って、耳に馴染みのある名前だけど、どんな紐のことだったっけ? そんなあなたでも、すぐに思い出せますよ。高級な茶道具やうつわが収められた桐箱、その箱を封じてある平たい織物の紐、あれが真田紐です。一見したところシンプルに見えるこの紐は、その名の通り、戦国武将の真田昌幸・信繁(幸村)親子が考案したといわれ、また茶道具の箱紐に使い始めたのは、かの茶聖・千利休といわれており、歴史に磨かれた由緒正しき紐なのです。ここでは、その真田紐の製造・販売において実に85%のシェアを誇る石川県の老舗「織元 すみや」をご紹介しましょう。
写真上:「最上正絹袋紐」(各色900円/幅9mm×1、長さ3m※販売は2mより。価格違いで12mm・15mm幅あり。縦糸:正絹100%、横糸:綿100%)
縦糸に正絹を用いる最高級の真田紐。美しい光沢・発色、しなやかで優しい手ざわりが特色です。(写真提供:織元 すみや、以下同)
あの千利休が着目した「真田紐」
刀の下げ緒や甲冑に用いられていたという真田紐。その実用性に千利休が着目し、箱紐に使い始めたのが約450年前といわれ、今でも茶道具や高級品のパッケージに用いられています。長きにわたって重宝されてきた真田紐、その特長は、丈夫で伸びにくく、滑りにくいということ。縦糸と横糸で平たく、かつ強く織られる真田紐は、世界で最も幅の狭い織物ともいうことができ、同じく日本を代表する紐のひとつ、美麗で、しかし伸びやすい組紐に対して、実用性において優ると評されてきた紐なのです。
「サムライデコリボン」(各色500円/幅12mm×2m、木綿100%)
その滑りにくさから刀の柄に巻かれることもあった真田紐。裏側に両面テープを配することで巻きつけやすく仕上げた人気商品です。自転車のハンドルや、傘の持ち手のアクセントなど、アイデア次第で様々な用途に。
茶の湯の文化が残る加賀地方
先人から受け継がれてきた真田紐づくりに「すみや」が参画したのは昭和3年(1928年)。本拠を置いた石川・加賀地方は、茶の湯の文化が色濃く残り、クオリティの高い塗物・陶芸・織物などの伝統工芸も数多く、有名作家の作品の箱紐として真田紐の出番が絶えない土地柄。手織り・機械織りと用途に合わせて職人技を駆使した織りで仕立てられる同社の真田紐は、現在に至るまで一貫して高い評価を得ています。
そしてここからが、古来、真田紐に備わる固有の文化といえるのですが、この紐は「指定柄」という、家紋のような顧客オリジナルの柄を注文することができるのです(詳細は要問い合わせ)。つまり、指定柄を持っている作家は、箱紐がトレードマーク代わり。なんだかとてもオシャレな感覚ですが、その由来は、かつて真田紐が刀の下げ緒や甲冑に使われた頃、やはり家ごとに好みの柄が生まれ、それが遺品回収の際に目印とされた、ということですから、少し神妙な気分になりますね。そんな歴史に思いを馳せながら、真田紐のコースターでお茶でも一服してみてはどうでしょう。武将や茶人、粋人の生きた時代が、平たく丈夫な紐を通してじんわりと伝わってくるかもしれません。

「サムライコースター」(各色600円/11.5×11cm)
木綿100%。1本の真田紐を編んでつくる、凝った仕立てのコースター。房のアクセントがかわいらしいですね。
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「織元 すみや」
住所:石川県金沢市神野町東95番地
電話番号:076-240-0781