多彩な発想で暮らしにとけ込む伝統の技「組紐」

日本刀や甲冑、仏具や茶道具など、長い歴史を誇る日本の工芸品を見渡したとき、それらに、ある共通のアイテムが使われていることに気づくのではないでしょうか。それが「組紐(くみひも)」。本来は実用品でありながら、芸術の域にまで装飾性を高めた、日本独自の美しい紐です。現代においても着物の帯締めなどに使われ、愛され続ける組紐、その伝統を受け継ぎつつ、新たな用途をも提案する京都の専門店「昇苑(しょうえん)くみひも」をご紹介しましょう。
写真上:「正絹 グラスコード 八つ組(ピンク)」(2,200円・税別、以下同)
正絹のグラスコードは、首に触れたときの感触が柔らかく軽いという組紐のメリットを生かした一品。「八つ組」とは、八つの玉(おもり)を使って組んでいく紐のことで、江戸紐とも呼ばれるポピュラーな組紐です。(写真提供:昇苑くみひも、以下同)
昇苑くみひもの歴史
「昇苑くみひも」の創業は1948年。当時は和服の需要が高く、帯締めのための組紐づくりに従事していたそうです。やがて「製紐(せいちゅう)機」という機械を導入しつつも、手組の技術向上にも努め、ご当主が二代続けて伝統工芸士に認定されるなど、着実な評価を得ながら現在に至ります。2000年代に入ってからは和装業界の冷え込みに負けじと、新たな商品開発にも着手。主力商品となった「正絹ストラップ」など新感覚のアイテムを続々とリリースする、ユニークな組紐専門店としての顔も持つようになったのです。

「正絹 手巻き茶筒 利休」(3,800円/直径約7×約12.7cm/全6色)
スチール製の生地缶に、絹糸で作った撚(よ)り紐を巻きつけて仕上げた茶筒。光沢を帯びた絹の紐を職人が手作業で巻きつける、組紐専門店ならではのアイテム。一般的な煎茶が約150g入ります。
繊細かつ華やかな織目で私たちの目を楽しませてくれる組紐は、日本の多くの伝統工芸品がそうであるように、実に様々な工程と、それに携わる職人の手を経て生み出されます。糸を染め、巻き、束ね、撚り、おもり玉と呼ばれるおもりの入った木の玉に巻き、ようやく手組のための糸の準備がととのいます。この糸を、何種類もある専用の組台で丹念に組み上げて組紐はできるのですが、それぞれの工程に熟練を要するコツとバリエーションがあり、それらは創業時からこちらに脈々と伝えられてきたもの。やすやすと真似ることはとてもできません。これらの難しさは製紐機を使った作業でも同様であり、機械の扱いと手組の技術の両方に精通した職人でなければ、製紐機を使って多様・複雑な組紐を作ることはできないのです。

「正絹 名刺入れ 大和組 黒」(5,500円/約7.2×10.2cm/全6色)
絹の組紐を縫い合わせ、大正時代に流行した矢絣(やがすり)柄の意匠をまとわせたカードケース。優しく手に馴染む組紐の質感を、使い込むほどに堪能できる洒落た小物です。